240 研究領域の現状
6-5 生命・錯体分子科学研究領域
生体分子機能研究部門
青 野 重 利(教授) (2002 年 5 月 1 日着任)
A -1) 専門領域:生物無機化学
A -2) 研究課題:
a) ヘムを活性中心とする気体分子センサータンパク質の構造と機能に関する研究 b) ヘムを活性中心とする新規な脱水酵素の構造と機能に関する研究
A -3) 研究活動の概略と主な成果
a) 本研究ではヘムを活性中心とする一酸化炭素センサータンパク質 C ooA ,および酸素センサータンパク質 H emA T の 構 造 機 能 相 関 の 解 明 を 目 的 と し て 研 究 を 行 っ た。C ooAに 関 し て は, 好 熱 性 一 酸 化 炭 素 酸 化 細 菌C. hydrogenoformans 由来の CooA (Ch-CooA )の結晶構造解析に成功した。今回得られた結晶構造は,分子中の還元
型ヘムにイミダゾールが配位した構造である。本構造は標的 D N Aには結合できない不活性型の構造であった。し かし,今回の構造は,以前に報告されている不活性型(還元型 C ooA )とはいくつか異なる構造を示していた。特に, N 末センサードメインと C 末 DNA結合ドメインをつなぐリンカー部分の折れ曲がり角度が,両者で大きくことなっ ていることが分かった。これらの違いを詳細に検討することにより,C ooA中のヘムに C O が結合した際にどのよ うな構造変化が誘起されることにより C ooAが活性化されるのかについて検討した。HemA T に関しては,C O 結合 型 H emA T にレーザー光を照射し,C O を光解離させた後の時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定を行い,外部配 位子の有無による H emA T 中のヘム近傍構造の変化について検討した。得られた結果を基に,H emA T が酸素をセ ンシングした後に誘起される構造変化についてのモデルを提案した。
b) アルドキシム脱水酵素はアルドキシムの脱水反応によりニトリルを生成する反応を触媒する新規なヘム含有酵素で ある。本年度の研究では,アルドキシム脱水酵素の構造機能相関の解明を目的とし,Rodococcus sp. N-771 株由来
のアルドキシム脱水酵素(OxdR E )の結晶構造解析を試みた。結晶化条件の詳細な検討を行い,いつくかの結晶化 条件下で,構造解析可能な回折データを与える OxdR E の単結晶を得ることに成功した。
B -1) 学術論文
H. YOSHIMURA, Y. MIZUTANI and S. AONO, “The Formation of Hydrogen Bond in the Proximal Heme Pocket of HemAT-
Bs upon Ligand Binding,” Biochem. Biophys. Res. Commun. 357, 1053–1057 (2007).
H. KOMORI, S. INAGAKI, S. YOSHIOKA, S. AONO and Y. HIGUCHI, “Crystal Structure of CO-Sensing Transcription Activator CooA Bound to Exogenous Ligand Imidazole,” J. Mol. Biol. 367, 864–871 (2007).
研究領域の現状 241 B -4) 招待講演
S. AONO, “Mechanism of oxygen sensing and signal transduction in HemAT revealed by resonance Raman spectroscopy,”
International Symposium on the Biological Application of Vibrational Spectroscopy, Hyogo (Japan), March 2007. 青野重利, 「気体分子により駆動される生体内シグナル伝達の分子機構」, 第7回日本蛋白質科学会年会 , 仙台 , 2007年 5月. S. AONO, “Molecular mechanism by which heme-based sensor proteins sense their effector gas molecules,” 67th Okazaki Conference “Molecular Science and Chemical Biology of Biomolecular Function,” Okazaki (Japan), November 2006.
B -7) 学会および社会的活動 学協会役員、委員
日本化学会生体機能関連化学部会幹事 (2007– ). 文部科学省、学術振興会等の役員等
日本学術振興会特別研究員等審査会専門委員 (2005–2007). 日本学術振興会国際事業委員会書面審査員 (2005–2007). 学会誌編集委員
J. Biol. Inorg. Chem., Editorial Advisory Board (2002–2004).
B -8) 大学での講義、客員
総合研究大学院大学物理科学研究科 , 「相関分子科学」, 2007年 12月 3日–5日.
B -9) 学位授与
吉村英哲 , 「T he mechanism of oxygen sensing and signal transduction in the heme-based oxygen sensor protein HemA T from Bacillus subtilis」, 2007年 3月, 博士(理学).
B -10)外部獲得資金
特定領域研究 ( A ) 「生体金属分子科学」, 「遷移金属含有型転写調節因子による遺伝子発現調節機構に関する研究」, 青野重 利 (1996年 –1999年 ).
旭硝子財団 奨励研究助成 , 「一酸化炭素による遺伝子発現の調節に関与する新規な転写調節因子 C ooA に関する研究」, 青 野重利 (1998年 ).
特定領域研究 (A ) 「標的分子デザイン」, 「一酸化炭素をエフェクターとする転写調節因子の一酸化炭素応答および DNA 認識 機構」, 青野重利 (1998年 –2000 年 ).
基盤研究 ( C ) , 「シグナルセンサーとしてのヘムを有する転写調節因子の構造と機能に関する研究」, 青野重利 (2000 年 –2001 年 ).
特定領域研究「生体金属センサー」「一酸化炭素センサー, として機能する転写調節因子 C ooA の構造と機能」, 青野重利 (2000 年 –2004年 ).
基盤研究 (B), 「ヘムを活性中心とする気体分子センサータンパク質の構造と機能」, 青野重利 (2002 年 –2003年 ). 萌芽研究 , 「気体分子センサータンパク質の構造機能解析とそのバイオ素子への応用」, 青野重利 (2002 年 –2003年 ). 東レ科学技術研究助成金 , 「気体分子による生体機能制御のケミカルバイオロジー」, 青野重利 (2003年 ).
242 研究領域の現状
基盤研究 (B), 「生体機能制御に関与する気体分子センサータンパク質の構造と機能」, 青野重利 (2004年 –2006年 ).
特定領域研究「配位空間の化学」, 「タンパク質配位空間を利用した気体分子センシングとシグナル伝達」, 青野重利 (2005年 – 2007年 ).
内藤記念科学奨励金(研究助成)「気体分子によ, る生体機能制御のケミカルバイオロジー」, 青野重利 (2006年 ).
倉田記念日立科学技術財団 倉田奨励金(研究助成)「一酸化炭素、, 一酸化窒素、酸素による遺伝子発現制御の分子機構」, 青野重利 (2006年 ).
基盤研究 ( B ) , 「気体分子を生理的エフェクターとする金属含有センサータンパク質の構造と機能」, 青野重利 (2007年 –2009 年 ).
特定領域研究「細胞感覚」, 「ガス分子により駆動される新規なセンサータンパク質の機能発現機構」, 青野重利 (2007年 –2008 年 ).
C ) 研究活動の課題と展望
これまでは,ヘムをセンサー本体として利用している気体分子センサータンパク質を主な研究対象とし,これらセンサータン パク質の構造機能相関の解明を目的として研究を進めてきた。これらセンサータンパク質の機能は,基本的にはセンサータン パク質が感知するエフェクター分子の有無により,センサータンパク質の分子構造が変化することで機能制御されている。し たがってこれらセンサータンパク質の構造機能相関を解明するためには,エフェクター分子存在下および非存在下におけるセ ンサータンパク質の分子構造を解明することが必須である。ここ数年,活性型 C ooA の構造解析を試みてはいるが,いまだ 成功するには至っていない。また,酸素センサータンパク質であるHemA T の構造解析についても未だ成功していない。今後 は C ooA ,H emA T の不活性型および活性型の構造決定を目指して研究を行う予定である。また,C ooA ,H emA T 以外の新 規なセンサータンパク質に関する研究にも取り組んで行きたい。